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単記事選択: #131

#131 ”草葉の蔭から”。 / funai [961030(Wed) 22:43]

(極めてプライベートなものは除かれており、
 大体において無作為な逆時代順であり、
 しかし実際には積み上げてある順番の為に異同がある、抜き書き。
 俺はキーボードを叩いている間に冷や汗まみれになってしまった)
 
 
 
 
「魂を八つ裂きにしよう」
 
JRの下りホームの端にひざまづいて
私はソウルを吐いているのじゃよ
知らん人が見たら
水銀を吐いておるのかと思うじゃろうね
 
別に臓腑を吐いている訳ではない
だから心配ないのじゃ駅員よ
ただ
えづく時にちょっと気色悪い
 
 
 
 
ロウライフ 君にもできる ロウライフ
尻でパンツを汚そう
救いようの無い夢に
ブルーシートをかぶせよう
 
 
 
 
私は次の場所を見つけなければならない
私は次の感情を規定せねばならない
私は次のステージに立たねばならない
私は次のバスに乗らねばならない
 
 
 
 
最後の審判は来ません。
ですからあなた方は
手に大きな石を持って
それでイエスの前歯を砕きなさい。
シルバーシートに仏が座っていたら
窓から蹴り出しなさい。
寺社仏閣に押し寄せて
取り付け騒ぎを起こしなさい。
 
 
 
 
『本当にね、神戸の方へ...またいらっしゃって下さい』
『井尻輪業』
『ベランダの白いカーテン(窓の外は西地中海である)、
 テーブルの上に並ぶ磁器類。
 私は病み上がりである。』
『...はてさて、この対決、一体どうなることやら』
『...それで天国ってのはどんな感じだった?』
『参ったよ、やたらチクチクかゆくてさ』
 
 
 
 
 
960408.
「永遠に続く落日」
 
僕と同じように考えないたくさんの人達
僕と同じように悲しまないたくさんの人達
 
兵庫駅にできたコンビニエンスストアへ行ったよ
いつか話したことがある
水色のソーダを出す食堂のあった所だよ
店の中はいつも照明が足りなくて
客の男達はいつも少しだけ疲れていたんだ
和田岬線の列車が日に7本しか出ないもんだから
みんなだれちゃったんだろうね
はるばる大阪から出てきた僕だけ
一人ではしゃいでたものさ
ホームの向こうは引込線跡の原っぱで
しょぼしょぼ小雨の降る昼間にそこを
君が駆け回って笑ってる夢
僕は何度も何度も見たよ
(大きなビルが建ったのは知ってるよね?
 犬を散歩させるところがなくなって気の毒だよ)
 
コンビニエンスストアはとても広くて明るい
おまけに薬だって売ってる
明日の朝の食べ物を買うにもとても便利
僕はマンガ雑誌も買ったよ
ゴルゴ13の載ってる奴さ
 
違うよ
 
なにも終わってやしない
ただ何もかも変わってしまっただけ
地震が根こそぎにしてくれなかったとしたら
僕はどんなに打ちのめされただろう
君がいなくなってしまったこの街に
 
...ああ、あれかい?
ぶちまじりのトラ猫がくわえて逃げちゃったよ
ぴゅーっとね。
 
 
 
 
とっくに熱死した言葉達の中をかき回して
私は 私の信仰を取り戻そうと試みた。
ある時には それはほとんど愛みたいだったし
ある時には それは清潔なフレームだった。
 
 
 
 
 
960309.
「近鉄車中」
ひとり ふたり さんにん よにん
駅にたむろしてる女子高生たち
ブレザー着て ジャンパー着て
かわいい子もブスの子も
ごにん ろくにん ななにん はちにん
たのむわ あそこの病院で死にかけてる
おっさんをひとりばかり救うてやってくれや
 
「待機室で」
足を投げ出してモーパッサンを読む俺と
ICUでオムツをつけた親父殿が
長い長い夜をぶっ飛ばすのだ。
 
 
 
 
 
960328.
「イボ」
 
俺は君に
俺の弱点を握って欲しかった
どれだけ絵筆をふるっても
ぬり潰すことの出来ない白色の点のことだ
だらだらと日々を乗りこなす間にも
俺は背中に輝く点の視線を感じ
恐怖で全身の皮膚は熱を持ち
その表面はいつも溶けかかってぬるぬるしていた
俺はそいつをこすり落とすために五年を空費し
恐怖から逃れるためについには不機嫌になった
電車やコインランドリーの中で
恐怖を怒りとすりかえる時に
俺は初めて安らぎを味わう
君は俺が何を恐れているのか知ろうともしなかったね
君は理解しなかっただろう
何も
俺はただ
背中の真ん中にこり固まった狂ったイボを
君の小さな指で押えてかくして欲しかっただけ
 
 
 
 
宗教右翼と徹底抗戦せよ。
我々こそが神の軍隊である。
 
 
 
 
「フクスケ」
 
何だっていわれても困るんだけど
寝そべってたらたまたま
手の届くところに君の耳があっただけだよ
だからちょっとつまんでみたんだ
でもそれだけじゃちょっと足りなかったから
そのままぐいっとねじってみたんだよ
もう僕は不安じゃないから
こんなの理不尽だって思うのなら
君 気が済むまで僕を怒ってもいいよ
 
 
 
 
960317.
「クワタ1号」
 
スイッチを切られてはなばなしく空中滑走
老いぼれて死ぬまで世間様とセーフ
常に指令に備えて待機せよ
 
やり場の無い怒りをエラの辺りから蒸気でアウト
恐れおののいてジャンプしてジャップがジョーク
水平に落下しているのだよ 我々
 
ジャストな範囲で盛りあがる志望の動機
吉田町のバスターミナルで幼女に欲情
『これこれ何をしてますねん、あきまへんがなあんさん』
 
 
 
 
「その件につきましては...」
 
私は今机の前に立っている
手にはミニコンポのアンテナ線を
丸めた人差指と親指でつまんで
それを動かしながら私は
NHK=FMのクラシック特集を聞こうとしている
手の動きはさながら手旗信号である
そして手が届かなくなると右に左に
私はカニのように大きく一歩動く
 
昨日 父は集中治療室から退室した
私は既に安らかである
大して褒められたことでもないが
それがどうしたというのだ?
日々腕を旋転させて
ああ しかし私は
もうあきらめてCDを聴くことにするよ。
 
 
 
 
人間らしいことがしたいなんて
別に思ってやしない
ただ水があればなあと
思っているだけ
 
 
 
 
次から次へと降りかかる
言葉だの詩だのをかわしながら
俺はぎりぎりの低空を飛行した。
ここより下には詩はない。
上空を飛ぶ巨大な爆撃機は
優雅な物腰で考えこんで見せたりして
口にいっぱいふくんだ水を噴き出すように
俺はやみくもに言葉を射ちまくる。
欲しいものがある時
俺は一度だけジャンプしてみるのだ
全力で。
二度とはくり返さないその訳は
高射砲が発明されたのを知ってるからだよ。
 
 
 
 
「ふつう」
 
熊手をふり上げて空をさっと一かきすると
いっせいに雨がこぼれ落ち
辺りはたちまち闇に包まれる。
たった一人 東須磨駅で
下り電車を待つ僕。
 
 
 
 
「ジェットコースター」
 
好きなところに行けなくても
スピードがあれば俺はOK
マイカーより
ジェットコースター。
 
 
 
 
960222.
「卑怯者達」
 
解るよ 君は忙しかったんだね
僕にも経験があるよ
きっと先週なら良かったんだね
僕もうっかりしていたよ
そうやってただ黙って立っているのは
君が寛容な人だからなんだね
 
 
 
 
960218.
「次第に立場を悪くしていく俺のバラッド」
 
a)
蓮の花の上がお似合いのヤングなピープルが
世界中の人々から安否を気づかわれているその頃
閉店前のめるへん珈琲店を出た俺の
その後の安否は別に誰ぞに気遣われる訳でもなく
俺は満月を期して烏原の水源池へ近づいていく。
 
b)
背後から襲撃を受けた俺はコンクリの護岸から転落する。
月の昇る刻限を計算に入れなかった軽率さが悔やまれるが
今の今 そんなことは問題になり得ない
鼻から水が逆流して来たのだよ
 
c)
水は臭くはないが口の中で異様な味覚を与えて唾液を押し流す
鼻に入る水を排出しようと第二音節の無いしゃっくりをくり返す
俺のむくれた顔面を『物語』は棒のようなもので殴り続け
例によってスローになった頭の中で俺は
国道の西からトラックが近づくのを聞きつけてほほ笑む。
 
d)
『物語』は厚顔無恥のバレバレ大変装で
相変わらず元町で北野で小粋な笑顔で人差し指をシェイク
貯水池に沈む俺はといえば
どのみちいずれ浮き上がってくるのだから
特に安否を気遣われることもなく
天気の良い日中には水の上に向け あぶくを吹き出している
ような 今日 この頃。
 
 
 
 

(...もう十分だろう。俺もクタビレた。殆ど打ちのめされている。
 最後の断片は
 未完成のマンガ「もうだめだ」の序文として考えられた)
 
 
 
 
美      と美術   の
トップランナーと周回遅れ の
快楽     と幸せ   の
社会     と共同体  の
路上     とアウトドアの
見分けをつけることもできない
そんなあんたに。
 


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